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No.9 西部HD(ホテル事業)

国内で最も売り上げをあげているホテルグループってご存知ですか?
アパ?星野リゾート
じつは、プリンスホテルを持ってる西武ホールディングスのホテル事業なんです。
 
【サービス名】
西武HDのホテル事業
 
【目次】
1.分析の目的、手法
2.Customer分析
3.Competitor分析
4.Company分析
5.まとめ
 
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1.分析の目的
今回は3C分析を用いて分析をしていきます。
一般的に3C分析を使うことによって「KSFの発見」につながるとされています。
KSFの発見とは、自社が他社に勝てる理由を見つけることととらえています。
 
2.Customer分析
Customer分析を行う理由は大きく2点あり、1点目は現在の市場環境を整理すること、2点目はターゲット市場の消費者のニーズを明確にすることにあります。そこで、マクロ(市場レベル)視点で前者を分析し、後者はミクロ(消費者)視点で分析を進めていきます。
 
A)マクロ視点の分析
「市場環境を整理する」というとざっくりしすぎなので、もう少し分解します。大きく3つの観点から整理をします。
まず、現在の視点。現在の市場規模とその中での自社のシェアを明らかにする。
次に、未来の視点。市場の成長性を吟味することで将来の市場規模を考えるヒントになります。
最後に、過去の視点。ターゲットとしている市場の領域ではどのような競争が行われてきたのか。
 
●現在の市場環境は?
市場規模はおよそ1兆4,769億円といわれています。
コンビニ業界の3分の1ほどです。
 
代表企業は以下の通りです。
2018年3月期
 
西武HD
172,990百万円(シェア11.7%)
リゾートトラスト
165,413百万円
116,102百万円
ルートイングループ
115,372百万円
ちなみに東横インは全体6位。
星野リゾートは60億を超えたくらいなので桁がひとつ少ないです。
 
●未来の市場規模は?
インバウンドの高まりとともにホテル需要も伸びてきています。が、昨今のコロナの影響で今年は停滞を免れませんね。
 
ここでCustomer分析にひとつ付け加えます。
後述しますが、西武HDは”MICE”の誘致を狙った戦略をとっています。
そこで、このMICEについて掘ってみましょう。
●MICEとは
MICEとは、企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際機関、団体、学会等が行う国際会議(Convention/Conference)、展示会・見本市・イベント(Exhibiton/Event)の頭文字で”多くの集客が見込まれるビジネスイベント”の総称です。
MICEに該当するイベントは参加者が多く、消費額も大きい。また、国際会議などは年々増加傾向にあるため市場としても伸びしろがある。
 
2018年に観光庁からMICEに関する調査報告によると、経済波及効果は以下の通り。
 
 
経済波及効果
Meeting
約1,614億円
Inventive trabvel
約569億円
Convention
約6,789億円
Exhibition
約1,618億円
Total
約1兆590億円
また、外国人参加者一人当たりの総消費額は平均33.7万円となっています。
 
 
B)ミクロ視点の分析
先ほどまでの分析をもとに考えると、西武HDのホテル事業においては
・高級ホテルに泊まりたい一般市民
・MICEの開催を意図した法人や団体
というふたつのターゲットを考えるのが妥当といえそうです。
 
3.Competitor分析
Competitor分析の主題は、競合が先ほど調べた市場のニーズをどの程度満たせているのかを明らかにすることです。
その際、間接競合についても分析をするのがポイントです。間接競合とは、業界や市場としては異なるが自社と同じターゲットに同じ課題解決を提供している競合のことです。(例えば、「痩せたい」というニーズに対してはサプリメントという解決策を提供する企業と、ジムという解決策を持つ企業があります。)反対に、同じ市場でばちばちやり合っている相手は直接競合と呼びます。
 
●直接競合①(プラザホテル)
詳細は後述しますが、都内でMICEの誘致を意識しているホテルとしてはプラザホテルが筆頭にあがります。ので、直接競合①はプラザホテルに設定。ただ、プリンスホテルに比べると根本的に数に圧倒的な差がある(プラザホテル3棟、プリンス43棟)
”MICEの誘致に関するノウハウを持っているホテル”という意味ではプラザホテルには伸びしろがあるし、棟数が急速に拡大したらプリンスホテルにとっても脅威になりうるが、現時点では脅威と呼ぶには至っていない。
 
 
●直接競合②(リゾートトラスト)
比較の理由は、売り上げで肉薄しているため。
リゾートトラストはリゾート会員権のシェアは国内トップで、日経MJが行っている会員制リゾートクラブ部門で25年連続売上高No.1である。
立地も全国津々浦々に広がっており、東京での事業は薄い。
プリンスホテルとは利用者のニーズが異なると考えるため、今回は分析の対象外とする。
 
 
●間接競合 大学施設
国際会議の会場という点においては大学施設が誘致の競合となっている。ただ、国際会議はそもそも大学同士で実施するものも多いので今回は分析外とする。
 
4.Company分析
Company分析では、Competitor分析と同じように、自社がターゲットのニーズをどの程度満たせているのかを明らかにします。
まずは客観的に分析をしたうえで、最後にCompany×Competitor×Customerすべてを総合的に判断し、勝てる領域とその理由を明確にする。
 
●自社が満たそうとしているニーズは何か?また、そのターゲットは誰なのか?
西武HDのHPのなかで「今後の経営計画・戦略」を見てみるとホテル・レジャー事業については
 ・「総合力で業界No.1ホテル・レジャー事業会社としての地位を確立」するという目標がある。そして、その下支えとして”MICE市場”で圧倒的なシェアを確保している実績がある。
MICEとはMeeting, Incentive travel, Convention, Exhibitionの総称で、簡単にいうと企業・団体がかかわるレベルの大型イベントのこと。
 
西武HD発行のファクトブックを見ると、2011年から2019年の間で、西武HDが保有するホテル施設数は42から43に増えたのみ。
客室数は159室減で98%
一方で、宴会場数は51会場増(253会場→304会場)で120%
さらに宴会場数をシティエリアに限定してみると、170会場から215会場へ45会場増え率にすると126%になる。
 
こうしてみると、西武HDがホテル事業で業界No.1を目指すのではなく、ホテル・レジャー事業で業界トップを目指す意図が見えてくる。
西武HDは通常のホテル業務に法人や団体をターゲットとした付加価値(MICE)をつける戦略をとっている。
 
JNTO国際会議統計のデータを調べると、2007年から2018年の期間で東京で開かれた国際会議は3214件あり、そのうち会場がホテルとなったケースが536件。”プリンスホテル”が受け持ったケースは112件ある。”プラザホテル”も同時期116件となっている。なお、直近5年(2013~2018年)ではプリンス47件、プラザ40件(全体217件)。
 
5.まとめ
ホテル業界におけるトップは「プリンスホテル」を展開する西武HDであり、その中で重要な位置を戦略が”MICE誘致”であることがわかった。
(コロナや東京オリンピック後の様子は見通すのが困難だが、)インバウンド需要の高まりとともに競争の激化が予想されるホテル業界において、西武HDはMICEの誘致とホテルの集客を両立できる数少ない存在である。
 
そんな西武HDにとって”脅威”となりうるのは以下の2点である
①売上高でリゾートトラストに抜かれる可能性は十分にあること
②MICE誘致で他ホテルや大学に後れをとること
 
これ以上の細かい分析はまたの機会に。